コーチングセッションでは「受容」と「共感」の姿勢が重要です。
これはコーチに限ったことではなく、
カウンセラーやコンサルタント、先生なども含め
人の支援に関わる立場の方には必須として身につけた方がいいと思っています。
それと似た言葉で「同感」というものもありますね。
これは、ちょっと注意を要します。
では、その「受容」「共感」、「同感」とはそれぞれどういうことなのかを
説明していきます。
受容とは?
簡単にいうと「相手のことをありのまま受け止める」こと。
よく、100%相手の味方になること、とも言われます。
私が講座において受講生さんに伝えていることが
・否定しないこと
・評価しないこと
・批判しないこと
です。
否定しないとは、それがどんなに自分の考えとは違っていても「違う」と言わないことです。
否定されると、話し手はそれ以上深い話へと進めることができなくなります。
また、否定される相手には話をしたくなくなったり、不信感を持ったりということもあります。
評価しないとは、それについて、よい、悪い、などを決めないということです。
人の話を評価するときは、自分の価値観(ものさし)に照らし合わせて判断しますね。
しかし、人によって価値観は、それぞれ違うため
その人の価値観に沿って決めることが大切なのです。
それを違う価値観を持った人が決めるということは、
重さを定規で図ろうとするようなものです。
その評価を伝えたとしても相手は納得しないし却って不信感を抱かせてしまうことになりかねません。
批判というのも同様で、評価によって生じることなので、
批判もしません。
受容するということは、ありのままに受け止めること。
以上の例から見ても、これが意外に難しいのです。
自分の中に何の意図も意思も持たず、
フラットな状態で対することも必要になります。
まずは受け止める、受容する。
そうすることで、
相手からすると、自分の話や思いが、
そのまま、何も加工されずに届いた、という実感を持ってもらえます。
受容的な態度で聞く
では受容的な聞き方とは具体的にどのようにしたらいいのでしょう。
キャッチボールでは、相手が投げたボールを
そのまま受け止めますね。
そんなイメージで話を受け止める、聞く、ということです。
そのときに注意したいことが2つあります。
1つ目が、前項でも挙げた、
・否定しない
・評価しない
・批判しない
です。
こう言うと、
そんな「否定」なんかしませんよ、っていう方もいらっしゃるでしょう。
でも、私たちは意外と人の話を否定してしまうことがあるのですよ。
自分の経験や考えと違うと、
「そんなことないと思うよ」
とか言っちゃいませんか?
これも「否定」になります。
「え〜どれほんと?」
「うそ〜〜」
なんて、気軽な応答も、その意味には「否定」が含まれていることがあるので要注意です。
次に、評価しないです。
通常、人の話を聞くときは、自分の経験や価値観に則って聞くことが多いと思います。
そうすると、それはよい、これはイマイチ、などのように
何かしら評価しがちです。
だから、相手の話は相手のものであり、自分が評価するものではない、
という姿勢が必要だと思います。
これは批判しないも同じです。
よく、人から「話を聞いてほしい」と相談を持ちかけられると
何かしら答えなければいけないのではないかと
構えてしまいますね。
でも、受容する聞き方はそうではないのです。
例え相談だとしても、
まずは、相手が何を話したいのかをそのまま聞いて受け止め、
受け取ってもらえたなと相手が実感できることが大事です。
その上で、相手が何かを必要としているのであれば、それに沿って話していけばいいのです。
2つ目は、自分の状態です。
1つ目が、聞く方法だとしたら、
2つ目の自分の状態とは、自分という器をどう扱うかということになります。
先ほどフラットに聞く、と書きましたが、
そのためには、まず自分が精神的に安定していることが必要です。
体調が悪かったり、何かイライラすることや心配なことを抱えていては、
相手の話をじっくり聞くどころではなく、自分に注意が向いてしまうでしょう。
また、相手の話の一部に影響を受けてしまう恐れもあります。
そうすると、自分でも思ってもいない反応をし、相手の安心感を損ねることにもなります。
ですから、話を聞くときには、できるだけ気持ちや体調を整え
安定した状態で聴くようにしたいものです。
もう一つ、自分自身の傾向や思い込みを把握しておくことも大事です。
特に、自分が苦手な領域に関する話題だと、
落ち着いて聞くのが難しいということもおきます。
どういう話題、言葉に対し、反応(イライラ、ざわざわ、反論、否定)などが起きるのか
把握しておくことが大事ですね。
自分自身の性格や特質をも客観的に見て、自己理解をしておきたいものです。
コーチや、カウンセラーなどの支援的な立場にある方は、
以上の二つを押さえて、相手を受容するという姿勢を大切にしてほしいと思います。
共感とは?
共感というと、
「それわかる!」
「私もそう思う〜」
のように、同じような感情を共有することのように思われがちですね。
でも、心理学など対人支援の場では、
それは共感とは言いません。
心理学者のロジャーズ博士は、傾聴における要素の一つとして、
「共感的理解」という言葉を挙げています。
共感的理解とは、相手の立場になって理解するように努めることです。
相手が感じている感情を、あたかも自分も感じているように振る舞うこと、とされています。
この「あたかも」が私は重要だなあと思います。
人の感情はその人にしかわからないものです。
「嬉しい」という感情も、相手と自分が全く同じ感情を感じているかというと、そうとは言い切れません。
相手には相手の感じ方があり「嬉しい」一つにしても、自分が感じる「嬉しい」とは同等のものとは言えないのです。
だから、相手がどう感じているかが大事なのであって、
その感情に対して、あたかも自分も同じように感じている、と伝えることが、
相手にとっての共感に沿って理解してもらえたという実感につながるのです。
ここで重要なのは、
相手が感じたことをとても大切に扱ってあげることです。
「あなたはそう感じたのですね・・・」と
その感情を受け入れ尊重し、
同じ時、同じ場であたかもその感情を共有していえるかのように接するといいでしょう。
共感的な態度で聞く
共感は、相手の感情を受け入れ、それを受容することで生まれます。
心理学者アルフレッド・アドラー博士は
「相手の目で見て、相手の耳で聞いて、相手の心で感じる」
と言っています。
これもなかなか難しいですね。
上記で触れたように、
共感は必ずしも相手と同じ感情になるのではありません。
相手の言葉や相手の表情から、相手が感じている感情をそのまま感じてあげるイメージです。
ですから、共感的な態度で聞くという時は、
相手に集中して聞くことが欠かせません。
相手の言葉や表情、そこに現れる感情に気づき
あたかも同じように感じているかのように受け止めるのです。
私は相手の感情を聞くときは、
相手の感情を理解することはできないけれど
相手の言葉を繰り返したり、
相手の表情に合わせたりすることで、
少しでも相手の感情を感じているかのように感じることはできます。
相手の感情を纏う、というイメージでしょうか。
そうすると、相手にとってもそんな私の様子を見ることで表した感情を確認できるようです。
相手が感情を味わいながら、話ができるように、
聞き手は共感的な姿勢で聞くことを心がけるといいでしょう。
同感とは?
同感とは、相手と同じように感じることです。
上記でも書いた
「わかるわかる〜〜」
「それ、同じ!」
という反応は同感です。
この同感を伝えることで、
対話では相手との距離が縮まり、親しみが増すという効果があります。
ただし、コーチングやカウンセリングなどのセッションでは
この同感は危険だと私は考えます。
同じ、、は嬉しいけれど、同じがある以上「違う」も出てきます。
同感モードで対話をすると、それは違う、という反応も
せざるを得ない状況になりますよね。
どこまでいっても全て同じ感情を持つ人はいませんから。
そうなると、対話中に相手の言葉を否定、評価ということにもつながりかねません。
また、行きすぎる同感表示は依存関係を導く恐れもあります。
相手と対等な関係で対話し、評価を加えずフラットに聞くためには、
「同感」を持ち込まない方がいいのです。
受容、共感、同感はどう違うの?
では、最後にそれぞれの違いを確認していきましょう。
「受容」とは、ありのままを認めて、受け入れることです。
ここには、一切の否定や評価は加わりません。
まるッとそのまま受け止めます。
「共感」とは、相手の感情に寄り添い共に感じること。
相手が感じている感情を感じるということから
あたかも感じているというような振る舞いも肝心です。
そして、順番で言うと、
まず「受容」で受け入れ、「共感」で感情によりそうとなります。
「あなたはそう思うのですね、そう感じるのですね。」
と言葉で伝えることも大事だと私は考えています。
「同感」は同じように感じること。
同じ感覚でいることで親近感が高まりますが、
セッションの場では要注意です。
同感は日常の中にとどめ
セッションでは、受容と共感を心がけ、対応していきたいものです。
相手を受容する、共感して話を聞く。
言葉にすると簡単ですが、
実際に実践するとなると難しいです。
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